おゆきの想い




季節と時間を感じながら、一生仕事がしたい。

そんな想いで漠然と夢見た田舎暮らし。

でも、田舎に住んだら美味しいパン食べられるの???

う〜〜ん、無理っぽい。じゃあ自分で作るか!!

そして、田舎の人にも美味しいパンがあることを知ってもらおう。


そうして私のパン屋修行は始まりました。

・・・

約5年間のパン屋での勉強を終え、ここ江与味に引越してきました。

どんなパン屋をしよう?大きな道すじは決まっているけれど、

細々したことは、これから決めないと...。



ガスや電気のオーブンではなく、石窯を選んだのはごく自然な流れでした。

私が楽しくパンを焼ける。

圧倒的な存在感で、ど〜〜〜んと構える石窯に初めて会ったときの


あの感動。

薪を燃やしてその余熱で焼いた焼き立てのパンを食べたときの

あの感動。

たくさんの人が石窯を囲んでワイワイ楽しむ

あの時間。

あの楽しい時間を私の石窯の周りで体験したい。



材料のこともそう。

よく「こだわってますね」と言われるけれど、そんなことは無いのです。
ただ、科学的に処理されて作られているものに魅力を感じないだけ。
余計な手を加えずに。人の手でつくられた物を使いたかっただけ。

...ごく自然な流れなのでした。




天然酵母を選んだのも、

「パンを作る」って言う感覚がよりダイレクトに伝わってきて、
楽しいし、おいしいから。
作り手が「楽しい」って思いながら作ったパンの方が
美味しいと思うのです。

そうやって、ご飯のようなシンプルなパンを中心に焼いています。




こんな山の上の小さなお店だけ。

外に出したり、通販も考えていません。

周りの人からは「道の駅に出したら?」「インターネットで売ったら?」
と言われますが、私にはその気がありません。

直接、お客さんと話をしながら、販売したいのです。

「美味しく食べるにはどうしたら??」「これがオススメですよ〜」
って、人と人とのふれあいを大事にしたいのです。

どんな人が買って行ってくれるのか、自分が育てたパンたちを
最後まで見届けたい。

ただ、売れたらいいって言う売り方はしたく無いのです。




営業は週に3日だけ。残りの半分は田舎での生活を楽しむ時間にしたいのです。

自分で野菜や米や小麦を作ったり。

ニワトリやヤギを飼ったり。

保存食つくりや薪割り・草刈・家の掃除・敷地内の整備。

やりたいことはたくさんあります。

いつか読んだ本に書いてあった、「半農半X(エックス)」と言う言葉。

生活の半分は農業や生活の為の仕事をして、
残りの半分は X=自分のしたい仕事 をして暮らしていこう。

夫婦2人が半分ずつ稼いで、残りの半分の時間は2人で楽しもう
って言う事を書いていました。このことに私は深く共感して
しまんと、そういう生活をしていきたいね、と話し合ったのでした。

そうやって、生活に必要なものはできるだけ自分達でつくり、

自然に還らないゴミはなるべく出さないで、

いつの間にかその辺に生えている、雑草の小さな花を見過ごさない

生活をしながら、ず〜〜〜っとず〜〜〜〜っと

美味しいパンを焼き続けていきたいのです。

2006.04.06