5年生性教育実践記録

2000年10月参観日に実施




   いのちの学習

 
1 教科・領域    特別活動・道徳

2 ねらい   
・いのちを伝える営みのすばらしさを知り、いのちの大切さに気づく。
・赤ちゃんは家族や周囲の人たちに大切にされて育っていくことを知り、自分のいのちを見つめ考えていくとともに,家族の思いを考える。
・お互いのいのちを大切にし、男女協力して助け合っていく心情を育てる。

3 実施計画  
  事前   アンケート「いのち」とは何か
     (1)いのちの大切さ
             -受けつがれるいのち
              -大切に育てられるいのち
     (2)小さな卵から大きくなった私たち
     (3)誕生
     (4)男女協力して(道徳) 
  
4 実践

学習活動
指導上の留意点
資料等

(1)いのちの大切さ
@アンケートをもとにいのちが生まれ伝えられていくことについて考える。

○心から伝えたい大切なことがあるので、真剣に受け止めてほしいという思いを語る。
○事前アンケートをもとに「いのち」についてのイメージを広げさせ、「生まれる」ということを取り上げる。
○地球上に生命が誕生して35億年たつが、一生は短いのに今も生き物が生きているのはどうしてか話し合う。 
・卵を産む  ・子孫を残している  ・いのちを伝えている


A受精について種類別に知る。 ○どうやって伝えてきているのか、種類別にまとめていく。
・魚(サケ)3000〜4000個の卵を産む。そのうち成長できるのは2〜4匹(生む数に比べて成長しにくい生き物の実態に改めて驚いていた。)
・両生類 
・は虫類      
・昆虫     
・鳥類    
交尾(体外での受精はいろいろな危険がある。できるだけ確実な方法で受精する。)
○ほ乳類は他の種類と違うところはどこか話し合う中で、より確実に成長させていることに気づけるようにする。 
・体の中である程度育てて赤ちゃんを産む。
○人間の場合は、性交という。

(2)小さな卵から大きくなった私たち @人間の受精の仕組みについて知る。










A受精後の胎児の成長を知る。








○みんなのいのちのもとは誰が持っていたか。 
・お父さんとお母さん
○卵子は1か月に1個卵巣で作られ、精子は1日に数千個精巣で作られることを伝え、数の概念を持たせる。
○1回の性交で約2億〜3億の精子が送られることや、精子が1p進むのに約3分かかること、3億の精子が協力して通り道をつくっていき、卵子にたどり着くこと、卵子と受精できるのはたった1個だけということを、数字を提示しながらその神秘的な出会いを感じさせる。
○私たちのいのちもそんな中で生まれてきた。
<ビデオを見る>
○受精後何日間母親の胎内で成長するか。 
・280日間(10ヶ月)
○胎児の成長の過程を、掲示物・エコー写真・胎児の模型で、月数ごとに確認していく。 
・受精後2ヶ月の小ささに驚く。
・人間の形にまだなっていないことに気づく。
○模型を提示しながら,、臓が動いていることや、耳が聞こえるようになっていることなど、胎児の成長を話していくことによって、より成長を実感させていく。
○小さくても生まれてから生きていけるよう、たくましく育っている。生きる力を持っている。
☆NHKスペシャル「生命誕生」の1部


☆胎児の成長の掲示物
☆エコー写真
☆胎児の模型
(3)誕生・参観日 @前時をふり返り,誕生の時を決めるのはいつか考える。



A誕生の様子「弟たちの誕生」のビデオを視聴する。






B自分が生まれたときの様子を家の人に話してもらう。



C今日のまとめをする。
○模型や挿し絵を提示して、徐々に成長していく胎児とお母さんのおなかを確認させ、善事の学習をふり返りやすくする。 
・「お母さん」と答える児童もいるがほとんど「赤ちゃん」と答える。
○赤ちゃんにとって子宮の中が狭くなり、栄養も酸素も十分でなくなってくることを伝える
○以下の点を心に留めて見るように助言する。
▽赤ちゃんとお母さんがどんなにがんばって誕生の時を迎えたのか。
▽私たち一人ひとりがどうやって生まれてきたのか。
▽家族はどんな思いで協力してきたのか。(▽お母さんのおなかの中で生まれようとがんばっている赤ちゃんのことも考えながら。)

・みんな真剣な表情で見ている。 
・誕生の瞬間には,驚いている児童や目をそらす児童もいた。

○お母さん方に、妊娠中の様子や思い、赤ちゃんが産まれたときの様子や思いなどを語ってもらうことで、自分たちが大切に育てられてきていることに気づけるようにする。 
・妊娠中のおなかの赤ちゃんの様子や、出産を待ち望んでいる気持ちなど 誕生の喜びにあふれた話を、しっかり聞いていた。

○勉強したことの感想を自由に書く。

事前指導
「いのち」と聞いてイメージすることばを考える。
○性の学習の事前アンケートとして,率直に受けるイメージを自由に書けるようにする。 
・人生・生きること・一生に一度・とても大切・尊いもの・たましい・好きなことができる・不思議な力を持っている・気持ち・心・ ドキドキ・生き物にある・一人一つ・親がくれたものなど






よかった点・今後の課題
児童の反応・感想
(2)後
  • このビデオを見たり話とかを聞いていのちがどんなに大切かよくわかった。とても 大切なことだと思った。これを見て、人間ってよくできてるなと思った。
  • 280日まで(おなかの中に)いるのはすごい。(赤ちゃんが)息をどうやってしているのか分からない。でも、栄養をもらっていることは知っています。赤ちゃんは長い月をかけてやっと育つのですごい。よくわかりました。赤ちゃんにもう一つのいのちをあげていた。
  • いのちはすごく大切なことがわかった。しかも(受精卵は精子の)2億から3億の中の一つだと初めて知った。
  • 赤ちゃんが産まれてくるまですごい道があったこと、精子と卵子が合体して初めてできる。すごいすごい小さい赤ちゃんができること、精子も卵子もすごいと思います。先生のおなかでも、もう8ヶ月、産まれてきてもいいくらいでした。いい勉強ができました。
  • 赤ちゃんが(おなかの中で)どういうふうに生きているかも分かりました。赤ちゃんができるのはすごいことだとおもいました。産まれるまで10ヶ月かかるのはどうしてだろう。
  • いのちはこうやってできてくるんだなと思った。(精子が)3分で1p進むんだったら、すごく小さいんだなと思った。
  • 生命というものは35億年も前からあってすごいと思った。あと、3億ぐらいの精子の中で、卵子にたどり着いて受精できるのは1つだけなんだ。ところで,DNAって何だろう。ほかに、赤ちゃんの実物大を見せてもらったけど、あんなにちっちゃいとは思わなかった。でも、280日たつとあんなに大きくなるんだね。
  • 30日目とかにもう心臓ができているとはしらなかった。心臓が最初からできていると知ったからよかった。かなりでかい子どもをおなかの中から出すのは大変そうだろうなと思った。
(3)後
◎今日のビデオを見て思ったことは、赤ちゃんを産むのは思ったより難しいんだなと思いました。息の仕方を変えたりいろいろ大変だとすごく思いました。お母さんがいなかったらぼくは生まれていなかったと思います。
◎(出産は)あんなに時間がかかるなんて思わなかった。
◎血がいっぱい出ていて痛そうでした。けど、うれしそうでした。私は痛いのにどうして笑えるのかと一瞬思いました。
◎出産の時は不安もあることがわかった。出産は生まれてきたらうれしいけど、流産をしたりしたら悲しそうだと思った。
◎赤ちゃんが産まれてくるときは大変だなあと思った。けど、よく、せまい道を通って出てこれるんだな、すごいなあ。
◎私もそうだったのかなあと思いました。私のお母さんはおなかを切って私を生んだそうです。お母さんもあんなに苦しかったことがわかりました。
◎赤ちゃんが産まれてくるときのおなかの様子が分かったし、産むとき頭から出てきて少し気持ち悪くなりました。でも、産むときは本当にいたいということがわかったし、産まれたらすごくうれしいということもわかった。
保護者の反応・感想
保護者の感想より
  • 命の大切さについて、順を追ってわかりやすく学習できていると思いました。1年生のときから、性教育の授業ををステップを追って学習してきた子どもたち、時には絵本を見、ビデオを見、実物大の模型を見ながら、少しずつ理解していっているから、今日のビデオも落ち着いて見ていたように思います。
  • 「自分は大切にされている」そんな思いを実感として感じられたように思います。
  • 子どもが生まれた時のことは、何度か話して聞かせてきましたが、話しただけではなかなか伝わらないことばかりです。目で見ると、よくわかったのではないでしょうか?親も経験していても自分のことはよくわからないままに終わったこともあり、あらためて感動しました。子どもたちも、これからの生き方に役立ててほしいと思います。
など
指導者の感想
まとめ
○(2)の学習では、自分たちのいのちが、かけがえのない唯一のものだと言うことを実感させたいと考え、精子の数・卵子の数、その出会い方をビデオも利用していねいに説明した。数の概念が育っているので、驚いている児童が多くいた。
○胎児の模型は、形状や大きさが具体的にわかり、児童は食い入るように関心を示した。とてもよい教具だと思う。
○ビデオ資料「弟たちの誕生」を使うことはとても迷ったが、とても感動的なものであるし、児童は関心もあったようだし、素直に受け入れられる最後の年齢だとも思ったので、扱った。児童の中には「気持ち悪い」という感想も多くあったが、5年生の段階ではそう思うのも当たり前で、それはまさに素直な反応だと思っている。
○女子の中には自分が産まれたことについてよりも、自分が出産する事についても考えている児童がいた。
○保護者の方に話をしてもらったことは、出産することの大変さよりも、その喜びの方が強調されており、たいへんよかった。
○この後、二次性徴についての学習をする必要があった。
資料・教材・その他 :参考資料等:
VTR「弟たちの誕生ーある家族の立会い出産ー」
書籍「赤ちゃんの誕生」
文:ニコル・テイラー/写真:レナルド・ニルソンほか
/訳:上野和子  あすなろ書房



   =エイズ出前講座=

 
 エイズ出前講座を今年は、5年生が受けました。エイズについての学習は全く初めてでしたが、感染症や免疫についても、わかりやすく説明してくださり、みんな興味を持って一生懸命話を聞いていました。
 
2001年1月25日(木)   


 主題     エイズってなあに

 
 ねらい   
        ・エイズについて知る。
        ・エイズは日常生活ではうつりにくいことがわかる。





          
学習活動
指導上の留意点
資料等
病気には、どんなものがあるか発表する。
  • 今までにかかったことのある病気を思いおこさせる。

・かぜ  ・みずぼうそう  ・はしか
・むし歯  ・目 ・インフルエンザ

  • 病気にはうつる病気とうつらない病気があり、うつる病気の原因は細菌やウイルスであることに気づかせる

感染から身体を守るしくみについて知る。
  • かぜの例を示し、細菌やウイルスがあっても発病しないのは、人間には身体を守るしくみがあることをおさえる。
めんえき


エイズについて知る。
  • エイズという病気の特徴を説明する。

・人から人へ感染する病気
・エイズウイルスという病原体(HIV)
・免疫のしくみを破壊する
・血液の中に住んでいる
・熱や水、乾燥に弱い
・少しのウイルスではうつらない
・発病するのに約10年

エイズの感染の仕方について考える。
  • 日常生活の様々な場合において、うつる場合とうつらない場合を予想させる。

・握手 ・つりかわ ・おなじ食器 ・汗、なみだ ・トイレ ・咳、くしゃみ ・プール ・キス ・蚊

  • 感染経路は、血液感染・性行為感染・母子感染の3つであることをおさえる。

カード
まとめをする。・日常の生活では不必要に不安がらず、ふだんの生活をしていれば感染する心配のないことをおさえる。
事前指導
エイズについて、児童にどれぐらいの知識があるのかを調べるために事前アンケートを行った。
事後指導
ジョナサン君の事例をもとにエイズ患者や感染者の気持ちを知ることで、自分たちの生き方について考えさせていきたい。

授業後は、講師の先生を囲んで懇談をしました。
津山環境保健所や旭町の保健婦からも、話をお聞きしました。また、保護者の方からは、エイズばかりでなく性感染症などについての熱心な質問や意見がありました。こういった機会を活用して、家庭での性教育についても、交流していく必要があると感じました。




 




よかった点と今後の課題等
児童の反応・感想
  • エイズについて事前アンケートを行った結果、エイズという言葉を聞いたことのない児童がほとんどであった。テレビや本からエイズという言葉を聞いたことがある児童も何人かいたが、知識はほとんどなかった。
  • 全く初めての児童にとっては、用語など理解できにくいところもあったように思う。逆にもっと詳しく知りたいという感想もあった。
  • 感染経路については、ほとんどの児童が理解できていた。
保護者の反応
  • 事前アンケートの結果、ほとんどの家庭で性教育に関わる話をしていないことがわかった。その理由としては、言いにくい・どのように話せばいいのかわからない等があげられる。
  • エイズとHIV感染の違いについての知識が、曖昧であった。
  • 今回の講座を担当してくださった先生や保健婦の方々も懇談に参加してくださり、エイズについての理解を深めることができ、有意義であった。
担任の感想
  • エイズ感染は、日常生活では感染しないことを理解させることができた。
  • 講師の先生との授業についての打ち合わせをもっと早い時期から綿密にしておくべきだった。
  • 事前アンケートをもっと授業に活かせるような内容にしておけば、また違った形の授業になったと思う。
  • 高学年では、性教育について保護者と参観日だけでなく、機会あるごとに話し合いを持つ必要がある。
  • たくさんの資料を用意していただいたので、とても参考になった。
  • 外部から講師の先生をお招きしたが、新鮮でよかった。